・格差が生む社会(1

 買い物から家に戻ってくると、いつもよりスリッパが少ないことに私は気付きました。「掃除をする人が来ている」だそうです。週に1回のペースで家全体の掃除を任せていると前に話してくれたことを私はすっかり忘れてしまっていたのです。メイドでも家政婦でもありません。ダ○キンに近い立場でしょうか。でも今日は4人います。いつもなら一人なのですが、時間に遅れてしまったため数の力で片付けようとしているそうです。こうやって文章を綴っている私も、部屋の掃除に追われてノートパソコンを持って移動をしています。

 こちらの情勢はわかりませんが、他の人が自分の部屋を片付けている状況で落ち着いて作業など私にはできません。申し訳なさが先行して手伝おうかと思ってしまうぐらいです。お茶も出してあげたい気持ちもあります。今も私の目の前でフローリングの雑巾がけをしている女性と目が合いました。軽く会釈しておきます。通じたのでしょうか。もしかしたら私とあまり年が変わらないのかもしれません。祖父祖母が雇っているので私は口出しできませんし、「そこは今朝私が掃除しましたよ」と言うこともできません。彼女らはお金をもらって契約し、仕事をしているわけです。いくらで雇っているのか、祖母に聞いてみました。1時間8元(200812月末のレートで約105円)という答えが返ってきました。なら4人で32元なのかと聞き返すと、はやり8元という返事でした。向こうが遅れた責任を数で取り戻しているのからこちらが4倍のお金を出す必要はないそうです。こうなると2時間の清掃で、この4人は一人4元で働いていることになります。ちなみに私がさきほど買ったポテトチップスが3.5元でした。

 移動をする前の部屋には10歳の従弟がいます。寝転がってマンガ読んでいました。彼のすぐ隣には跪いて床拭きする女性がいます。数学テストでは学年トップ5(300人中)に入るほどの才の持ち主の眼には彼女がどう映っているのでしょうか。知識のある者が勝つと優越に浸っているのでしょうか。